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7月18日〜7月22日

完全に、タイミングを失って、宇野のゲストハウスlitでこれを書いている。

18日の大阪アトリエ三月の展覧会、オープニングの日。17日の台風の雨はやんで、暑い夏の日がまた復活している。朝から、音や映像周りの作品の配線。海外の機材を日本で使う時は要注意。なかなかトラブルが多い。データだけ送ってもらって、機材は日本で用意するというのがよかったのかも。

何とか、準備を整えてオープニングに間に合わせる。オープニングでは、せっかくなのでグレンさんにイギリスのギャラリーの事や、レベッカさんの作品の説明をしてもらう。そして、僕は翻訳。対話を続けていると、イギリスと日本のいろいろな違いが明るみになる。オープニングに来ていたアーティスト達に、君は何を描いているのか、テーマは何か、なぜそれを描いているのか、と何度も聞いていた。日本人のアーティスト達は、自分の作るモノに対して、あまり理由を求めないし、あったとしても、それを言葉にするのは非常に難しいと思っている。単純に言葉にし慣れていないというだけでなく、モノを作る事と言葉とを結び付けない傾向があるのではないか。日本人も、もっと自分の作るモノを説明出来た方が良いと言うのではなく、何かが根本的に違っていて、だからこそ面白い。グレンさんも日本のアーティスト達といろいろ話が出来た事を喜んでいた。

19日。恐らくここ数日が一番の難所。朝早くに車を借りにいって、彦根へ。まずは、ピンク色に塗った壁紙を壁に貼り付けていく。そこへ木のアングルを取り付けていく。問題は高橋美術の壁が石膏ボードなので、どうやれば上手く固定出来るのかという事。休憩がてら琵琶湖に行く。グレンさんが日本に来てからずっと泳ぎたいと言っている。壁紙を貼り終えて、いくつかアングルの取り付けをしてから、あまり遅くならないうちに宿のゲストハウス無我へ。

20日。彦根の高橋美術も本日オープニング。が、木のアングルの最後の一つがどうしても固定出来ない。昼過ぎから、設営が完了しないままお客さんもちらほらやってくる。いろいろ話が出来て、お客さんもそれなりに設営の様子を楽しんでくれていたみたいなので、よかったのだけど。交流会が始まる前ギリギリに設営も何とか完了する。交流会は、始めあまりお客さんが居なくて、どうなるかと思ったけど、ゆっくりと、遅くまであとからあとからお客さんが来てくれて、最終的には沢山の人に見てもらう事が出来た。きっと彦根タイムがあるのだろうと思う。人が集まってきたところで、グレンさんが少しAirSpace Gallery の事とベンさんの作品の説明をしてくれる。僕は、翻訳を。僕自身もこうやってグレンさんの言葉を沢山翻訳する事によって、彼がどのように考えているのかというのがとてもよく分かるようになった。疲れるのだけど、素晴らしい経験をさせてもらっている。高橋美術の建築とベンさんの作品の対比、そして高橋良さんとベンさんの作品の対比、パーフェクトな組み合わせだと思う。深夜のドライブで帰宅。

21日。朝早くに車を返しに西宮へ。そこから、郵便を送ったりして芦屋駅で鈴木さんと落ち合って岡山の宇野へ向けて出発。車内で、僕らは睡眠、グレンさんはブログを書いて、そして鈴木さんはスケッチ。相生から岡山、岡山から宇野への電車で車窓を流れていく景色にいつも心が洗われる。この景色は新幹線や自動車では体感出来ない。宇野に到着して、食堂でお昼ごはん。宇野に来る時はいつもイベントでバタバタしていて、なかなかこうやって外でゆっくり食事をする事が出来なかった。東山ビルに移動して、鈴木さんの作品の設営。考えるよりもとにかく、壁に貼っていく。貼って貼って、どんどん貼る。階段壁面、2階の純喫茶東山、3階4階ととにかく沢山貼った。途中で、東山ビルのマネージャーの与吟さんが合流。そして、大半を貼り終えた所でソエちゃんも来てくれて皆で晩御飯へ。宇野で二人に会うととてもホッとする。当たり前だけど、ここまで3箇所で設営をして、3箇所とも全く違う展覧会になっている。それぞれがとても絶妙なバランスで成り立っている。感謝。いつものゲストハウスlit で少し早めの就寝。

22日。鈴木さんは早起きをして、絵を追加しに東山ビルへ。皆で朝ごはんを食べた後、途中でグレンさんは直島へ。作品を貼り終え、全ての仕事を片付け、鈴木さんは颯爽と大阪へと戻っていった。そして、ビルに戻って山陽新聞の取材をうける。そういえば、昼食で昨晩ご飯を食べた中華のお店にまた入ったのだけど、お店のお父さんとえらく長話をしてしまった。宇野の話や最近の若い人達や外国からのお客さんの話、アートの話まで出来て、とても楽しい時間だった。妻からここの所僕が少しオープンマインドになっていると言われる。とてもオープンマインドなグレンさんに影響されているし、この旅で、少しいろいろな人に心を開いていけるように努力しようと意識している。夜は地元の居酒屋へ。グレンさんも大満足だったようで、嬉しい。明日の午前中まで、もう少し宇野を満喫するつもり。来る度に宇野の街が好きになっていく。

7月23日

朝にそえちゃんと合流して、玉野をいろいろ案内してもらう。王子が岳へ。四国、瀬戸内海、海に浮かぶ島々が一望出来る。朝に降った雨で、山に霧がかかってとても美しい景色。絶景。

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ビーチによって、今度はそえちゃんの畑へ。大豆、小豆、しそ、なす、人参、沢山植わっていた。山並みの深い緑と、畑の鮮やかな緑。そえちゃんがこの場所でどんなふうに暮らしているのかがよく分かった。

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いつも玉野に来ても、バタバタとイベントをやって、すぐに次の場所へ移動していたから、こんなにゆっくり出来たのは初めて。知れば知るほどに良い所だなと思う。そして何となく、離れがたくなる。Bollardで美味しい珈琲を飲んで、昼ご飯を食べて、もう一度東山ビルへ。最後に撮影をする。またすぐに来ます、玉野。

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夕方に4つ目の展覧会場、尾道の光明寺會舘に到着。一階のカフェ部分がびっくりする程変貌を遂げている。2階は展示の準備で大忙しの様子。メディアプレーヤーのチェックだけして、設営は明日。去年の展覧会でも泊まった、長江の本の家に。そして、晩ご飯はお隣さんのえっちゃんのお宅でご馳走になる。いつもすみません。

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写真は、階段の梁で頭をしこたまぶつけて、テンションを下げるグレンさん。

7月24日

暑い。尾道はいつも夏を思い出す。というか尾道に来るのは夏ばっかりだ。夏がとてもよく似合う街だ。昼からエミリーさんの作品を設営。そして、光明寺會舘では、今回もう一つの部屋でDOGS IN A ROOM というグループ展が行われる。とてもこの状況で今日中に設営が完了するとは思えない。

エミリーさんの作品の設営も思っていたよりも手間取る。やっぱり電子機器が入るととたんにトラブルが増える。あと、イギリス側のアーティストの作品は、場所に合わせて展示の仕方を変えるという様な融通が効かない。その辺りで、僕とグレンさんと双方でストレスになっていたのではないか。僕は、イギリス人アーティストの作品に慣れていなくて、グレンさんは日本のギャラリースペースに慣れていないという。お互いに落とし所を探る。

晩ご飯は三上さんに教えてもらった居酒屋へ。グレンさんはお刺身を食べれて満足の様子。普段、一日ほぼ一食で、プラスで食べても朝にフルーツとヨーグルトぐらいとの事なので、軽めでセーブしておく。イギリス人と比べて、日本人って生活における食の重要度がかなり高いんだな、と思う。食事を終えて會舘に戻って設営作業の続き。1時過ぎに宿に戻って気絶。

7月25日

暑い。今日も暑い。午前中に映像機器の調整をして、何とかうまく再生できるようになる。同時開催のDOGS IN A ROOM 展の方も幾つかの作品を設営し終えて、今日から展覧会はオープン。とても面白い展覧会になっていると思う。他の場所でこんな展覧会は見る事は出来ない。

夜は、花火。数年前も尾道で花火を見た。あの時は確かカレーを出していた。知らない人たちばかりだけど、こうやって集まってバーベキューをしながら、花火を見るなんて、地元とか、大阪ではちょっと考えられない。尾道のこのコミュニティの大きさが僕には丁度良くて、何度も来てしまう理由だ。また何年後かの夏にこの場所で花火が見れたらなと思う。

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7月26日

午前中、グレンさんの体調があまり良くなさそうだったので、二人で出かける。ロープウェイで千光寺まで上がって、尾道市立美術館へ。キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展を観覧。美しい作画、緻密な銅版画。展示室は小さな部屋で6つ程に分かれていて、集中して、そして疲れずに作品を見る事が出来る。ロビーからは旧尾道市街、瀬戸内海を見渡せて最高のロケーション。良い美術館だ。

山から下りて、艮(うしとら)神社へ。何度も尾道に来ているけど、この神社には初めて訪れる。尾道で最初に出来た神社で806年鎮座との事。そして、樹齢900年近い楠が4本も生えている。楠の木肌には、苔やいろいろな植物がファサファサと風に揺られていて、懐の深さを感じた。随分と満たされた気持ちで、みやちで天ぷら中華、いなりといういつもの組み合わせの昼食。これが無いと尾道に来た感じがしない。

一旦、本の家に戻ってシャワーを浴びてから、グレンさんとともに出かける。ハライソ珈琲へ寄ってから會舘へ。グレンさんはえらくハライソを気に入っていた。70年代にタイムスリップしたみたいだ、と言っていた。喜んでくれて嬉しい。今日は、オープニングレゼプションで、トークイベントもある。

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トークイベントでは、まず、僕とグレンさんにそれぞれ10個ほど定型の質問が行われる。聞き手は光明寺會舘を運営する、もうひとり(小野環+三上清仁)と、通訳としてアーティストの稲川豊さん。好きな場所に、みやちやハライソ珈琲、好きなミュージアムになかた美術館を挙げるなど、大分尾道ラブな回答をしてしまった。それぞれの定型の質問が終わって、あとは月夜と少年の活動や、今回のIndefinable Cities の紹介、そしてグレンさんからはAirSpace Gallery の活動の紹介。午後7時から始めて、大分長丁場で、途中からは皆で晩ご飯を囲みながらディスカッションが行われた。話したい事があり過ぎて随分早口で喋ってしまった気がする。トークイベントで話をするのが結構好きだという事に気づく。誰か呼んでください。

ディスカッション、インタビューの中でのメモ。
日本とイギリスで、展示方法の違いには、建物そのものへの信頼度が影響しているのではないか。ヨーロッパの建物は石造りで壁がしっかりしている。日本の建物は木造で、建物そのものへの信頼度がもともと低い。
理想的なドキュメンテーションとは、バイリンガルで、そして完成していない事。とか。

7月27日

今回、随分ゆっくりと尾道を堪能出来た気がする。ゆっくり起きて、午後から稲川さんが向島に連れて行ってくれる。玉野に引き続き、尾道でもビーチへ。ビーチが目の前にある立花食堂で寺岡くんに遭遇。なんでも週に1度だけここで働いているとか。高知、大阪、西宮、そして尾道、寺岡くんに最近よく出会う。こういうのは、きっと次の何かへのシルシだ。グレンさんは少し泳いでいた。

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ずっと行きたかったUSHIO CHOCOLATL へ。店主の真也くんには、確か4年前に出会っていて、その時は三上家に居候をしていた。それから、彼は結婚し、子供も生まれた。いつだったか、尾道を訪れていた時にたまたま会って、これからグアテマラにカカオ豆を仕入れに行くと言っていた。そして、向島の山のてっぺんの、素晴らしい景色の場所でチョコレート工場とカフェをオープンさせた。尾道には、何か不思議な魅力があるのだと思う。彼ほど劇的では無いけれど、僕も尾道に来るようになって、確かに人生が変わったと思っている。

予定していたよりも随分遅くなってしまったけど、6時過ぎに尾道を離れる。途中お腹が空いてグレンさんと共に駅そばを体験。11時前に約1週間振りの帰宅。1週間窓を閉め切っていて、自宅はサウナ状態。

7月28日

旅で結構疲れたのか、もしくは自宅が暑すぎるのかほとんど何もする気にならず、だらだらして過ごす。あ、掃除だけした。一週間居なくても埃はたまる。そして日記を書いて終わり。

7月29日

午前中、起きると酷い目眩。夕方になってようやくましになる。神戸に出掛けていたグレンさんが帰ってきてから、たくさんしゃべる。今夜はグレンさんがイギリス式の晩ご飯を用意してくれた。ランクシャープディングに、ローストチキン、それに野菜。グレイビーソースをかけて食べる。とても美味しかった。明日から甲府。