ベルリンから電車で2時間程、今回ドイツに来る機会をくれたGängeviertel のリサーチのためハンブルグへ。

そう言えば、ベルリンからハンブルグへの移動日が土曜日だったのだけど、電車までの時間でどこか駅の近くで昼食を取ろうとお店を探した。ところが、周辺のカフェは休みだらけ。あぁ、と納得。キリスト教、ユダヤ教など信仰心の強いところは土曜日休みのところが多い。

人間は生まれながらにして労働を運命付けられているが、その一方で、生産性の追及には制限が設けられていた。ヘブライ思想は、聖なるものと世俗とを峻別した点に特徴があり、聖なる領域では、時間を節約したり、合理化したり、効率を最大化したりすることは許されなかった。その端的な例が、安息日(土曜日)の定めである。安息日には誰も働いてはならない。使用人や家畜も、である。

「善と悪の経済学/トーマス・セドラチェク」 第1部 古代から近代へ より

あと、ドイツでは街を歩いていて、どの通りからでもどこかに教会を見つける事ができた。そして、定時には鐘の音が響きわたっていた。これは、意識をしていようといまいと、この街に暮らす人々に何かしらの影響を与えているに違いない。

ハンブルグは運河が多く流れていて、運河に沿って倉庫が立ち並ぶシュパイヒャーシュタットと呼ばれるエリアがある。赤煉瓦のゴシック建築でとても美しい場所だ。倉庫街にあったWASSERSCHLOSS SPEICHERSDTというお茶屋さんが素晴らしかった。あと、立ち寄ったVergissmeinnichtという子供服のお店でも感じたのだけど、その場所、その人、そのものでなければ成り立たないというような、再現出来ない事ってやっぱり美しいのだ。特に誰に望まれるでも、流行りを目指した訳でもなく、成るべくしてそう成ったという店の佇まいに、心を動かされる。

さて、今回の大切な目的地である Gängeviertel。ハンブルグのど真ん中、高層ビルが立ち並ぶ中に、一区画だけタイムスリップしたかのような村がある。この場所を、自身もアーティストであり、ギャラリー部門の担当をしているJessica Leinenさんに案内してもらった。Gängeviertelは19世紀から労働者が多く住む場所として、高密度で木造アパートが建てられ、ある種独特な景観を生み出していた。しかし、近代化と同時に空き家が増え、廃墟化し衛生面などでも問題が取り沙汰され、2009年には取り壊しの計画が上がっていた。そこに、約200人のアーティスト達が集まり、この場所を占拠してしまったのだ。その後彼らの活動は正式に認められ、Gängeviertelの保存と活用が決まった。現在では、ギャラリー、アトリエ、住居、ライブスペース、カフェなどが入居している。中でも面白いのはパブリック・キッチンという取り組みだ。ここは、食事代がフリーで、お金を持っていれば食事代を払えば良いし、無ければ払わなくても構わない。料金を払うかわりに、料理を一緒に作っても良いし、皿洗いを手伝っても良い。そして食材は、近くのスーパーから廃棄される前のものが提供されている。このユートピアのような空間とそこを取り囲む高層ビル群とのギャップに目眩を起こしそうになる。規模は違うけれど、僕らがやっているスパイスと銀貨の話などもし、まだ見ぬ未来のプロジェクトにお互いに心を躍らせた。