2009年に行われた画家岩瀬ゆかの展覧会「日々一片」のショートレビュー。

僕は、カフェでの展覧会を観るという事にあまり好意的になれない。カフェで開催される展覧会の多くが、そのカフェという空間に対して、あるものはあまりに日常的過ぎるし、またあるものは、あまりに非日常的過ぎる。カメラを始めたばかりのような大学生が、トイカメラを使って日々の生活をランダムに写した写真。そこに添えられる日記のような文章(彼等はそれを詩と呼ぶ)。そんな取り立てて公開すべき事でもないものを、大袈裟に誇張したところで、観る者にある種の気恥ずかしさを起こさせ、その後にはカフェという空間に埋没し同化してしまう。また、カフェという場所を利用して、より多くの観客の支持を獲得しようとする画家達。彼等の作品はカフェという空間に対して、あまりにエゴイスティックだし、その空間を圧迫する。観客は押し寄せる不自然さに負けて、壁を見ない様にし、運ばれるコーヒーと食事に集中するしかない。

ところが、この「日々一片」は、カフェで開催される展覧会のどちらの典型とも違っていた。言うなれば、日常の延長に確かに存在する非日常の美しさを、その狭間に立って描いていたのではないか。どこにでも、誰のもとでも起こる日常を、ただただ静かにじっと見つめ、ある瞬間に立ち現れる、それまで感じる事のなかった、美しさや驚き。それはとても丁寧に、そして時には大胆な線と色をもって、紙片の上に切り取られ並べられていた。大阪のビジネス街にありながら、どこか地中海に面した国の、路地裏に佇む小さなカフェのような雰囲気を感じるcafe nino という場所。彼女の日々の視線は、日常と非日常が心地よく混在するこのカフェにじつにぴったりと、美しく並べられていた。