西絢香による展覧会「6月に海がふる」のショートレビュー。

1年程前に彼女がギャラリーに初めて来てくれた時、外は確か激しい雨が降っていた。そして、初対面にも関わらず、ちょっとしたきっかけ(何だか不思議な縁で)のおかげで、えらく長話をしてしまった。この時すでに、僕は彼女の初の個展がきっと素敵な展覧会になるだろう事を予感していたのかもしれない。

展覧会は「6月に海がふる」というタイトルがつけられた。雨の降る一日の妄想の様な世界の結晶。湿度の高い部屋の中ぼやけた境界で見える、かつて存在していたかもしれない世界。そんな光景がぼんやりと浮かび上がる。

ところが、梅雨入りの発表にも関わらず、展覧会期間中は全く雨が降らなかった。6月にしては、暑いくらいの日差しのなかで、海は山となり中空に浮遊し月が昇った。重力を失った様な浮遊感が印象的だった。

新聞の天気図、レモンの皮、かき餅、電球、石、等々。彼女は存在が忘れられてしまうような、様々なモノに再度光をあて新しい輝きを発見してみせるのだ。思考は自由だ。どこにでも行ける。アートにおいて公然と、そして既成事実であるように語られる自由という言葉だけど、一体どれだけの人がその本来の意味を忘れずに、作品を作ろうとしているだろう。そして、それは現代を生きる人達の一つのキーワードかもしれない。