岩瀬ゆかのおよそ5年振りとなる個展。僕らがまだ自分たちのギャラリースペースを持っていた頃にも2度展覧会をやってもらっている。時がぴたりと止まった様な、とても静かな雰囲気の人物画や静物画が印象に残っている。そして、時間をかけて何度も塗り重ねられた様な、少しくすんだ薄紫、黄緑、水色、橙色、そんな色彩が彼女の絵の特徴だったように思う。

月日が経つのはあっと言う間だ。あれから、彼女は二人の子供を産み、そしてとても軽やかな絵を描くようになっていた。細かく思い切りの良いタッチで描かれた、木の葉や風景の合間にのぞく、白地が何よりも印象に残った。子育てや忙しい日々の中で、限られたごく僅かな時間で絵を描いていると聞いた。おそらくそうした制作環境の変化は彼女の作品に大きな影響を与えているだろう。二人の子供を育てる中で、一つの物をじっとみつめ、色を重ねて絵を描きあげるというのは、なかなか現実的だとは思えない。

例えば、休日に家族で公園にでかけ、芝生に寝転んでみる。駆け回る子供たちをながめながら、ふと仰向けに空を見上げる。その瞬間に、風が心地よく吹き抜けていった。風に揺れる木々、重なり合う木の葉の合間で光がきらめく。それはきっと今の彼女にとって何ものにも変えられない幸せの瞬間だろう。そんな一瞬を逃さないように、部屋で呼吸するのも忘れるほどに一気に筆を入れていく。そして、出来上がった絵を前に、すぅー、はぁーっと深く呼吸をする。きっと、こんな「ナイス・ブリーズ」が彼女の側では時々吹き抜けるのだ。