2009年に行われたアーティスト奥平アンリの展覧会「空に鳥がいなくなった日」のショートレビュー。

「空に鳥がいなくなった日」神話か予言書の一説かと思わせるようなタイトル。彼女は、この言葉と10年を超える年月を共に生きてきたという。鼓膜の裏にこびりついたように、ふとした瞬間に体の内側でのみ鳴らされる不思議な響き。展覧会に向け数枚の絵を描き進めて行くうちに、スルスルと体の内からこの言葉が引き出されたようだ。

「空に鳥がいなくなった日」を想像してみる。どうにも明るい未来も物語も見えてこない。灰色とも紫色とも緑色とも、何とも言えない色の空。正しく彼女の描いた様な空に捕われ宙に浮かんでいる鳥と自分自身を想像する。結局のところ、空も鳥も人間も繋がっているのだという事を、この物語の様な作品群が無言のうちに語りかけているように感じた。

絵を描くという事が、技法も知識もコンセプトといった小手先の物を超えた所で、生命を営む為の根源的な一つの手段として存在し得る事を見せてくれたのだ。