自宅の和室を改装した。計画から思うと、2年ぐらいが経過してしまった。もともと、展覧会や音楽のイベントを企画するという仕事柄、我が家には来客が非常に多い。多くのアーティストたちが関西圏に来た際には、この場所に立ち寄ってくれ、寝食を共にし様々なことを語ってくれた。それは、間違いなく僕たち夫婦の生きる指標となっている。

この一年半ぐらいの間に、これからの時代における芸術の存在の可能性とはどこにあるかという事を考えながら、少しずつアイディアを練っていた。ギャラリーや、美術館という既存の枠組みが、アートを体感する為には機能不全に陥っているのではと思えてならない。アートファンを増やそうと、手を替え品を替え、場所を開いていこうとはしているものの、多くの人の生活からはますます乖離していっているように感じるのだ。

いっそ、アートと関わる空間自体をもっと内省的で閉じたものにした方が良いのではないか。多くの人に向けて開き、取っ付き易い場所を目指すのではなく、ごく限られた本当のファン、もしくは極論を言えばアーティスト本人だけが、自分の生み出す作品と向き合う事のできる閉じられた空間を作りたいと思っていた。究極に閉じた空間というのは、実は外の世界の異質な場所へと通じる、どこでもドアのような存在にもなり得るという直感もあった。

そして、僕たち夫婦のアトリエ兼自宅の一室をアーティストの為の展示空間にすることを思い立った。年に数回展覧会を企画し、また、他には海外からキュレーターやライターを招き、日本でのリサーチ活動のためのマイクロレジデンスにもしたいと考えている。

他の業種の人だとびっくりするかもしれないが、日本では展覧会を主催するギャラリーから、アーティストに制作費が払われるという事はほとんどない。本来なら、ギャラリーからアーティストへ資金提供を行い、作品制作と展覧会開催を依頼し、アーティストは作品を制作しギャラリーへ作品を提供する。ギャラリー側は、その作品を販売するかもしくは入場料から制作費とアーティストへのギャランティをペイするというのが、分かり易い形だと思うのだけど、日本の小さなギャラリーでは、そのような形でスムーズに運営されているところはほとんどないだろう。どうかすると、アーティストはギャラリーにスペースレンタル代や、グループ展なんかだと、参加費や出展費を支払って作品発表を行なっていたりする。これでは、アーティストは疲弊していく一方だ。

今回この新しいスペースを作るにあたって、いくつか考えているベーシックなプランがある。基本的には展覧会は広く公開を目的としない。日に1〜2組限定で予約者のみへの公開。観覧希望者へは、去年イベントで実施した、「スパイスと銀貨」という方法での、観覧料を支払いをお願いする。アーティストへは、観覧料の多少に関わらず定額で制作費を支払う。スペースの運営維持費、展覧会の制作費などは投資活動で得た余剰利益を充てる。と、いうようなことを考えていて、今年中に行う展覧会の企画もすでにスタートしている。このブログでも少しずつ報告できればと思っている。