先日、久しぶりに藤田陽介のライブ「知らない声 -Unknown Voice-」を観に京都のUrBANGUILDへ行った。会場に入って、すぐに2つの事が気になった。ちゃちなスピーカーから流れるAMラジオのような有線放送のような音声。そしてなぜか炭を焚いたような匂い。去年訪れた藤野にある藤田の家を思い出す。ここは何処だ。

演奏が始まる。以前は、パイプオルガンをドローン的に演奏している割合が多かった気がするが、随分とリズミカルな演奏になっている。喉歌ではあるけど、キャッチーで都会的な印象をうける。そして、会場の音響が素晴らしい。彼のライブは生音で聴くのが良いと思っていたけど、今日のような音ならばスピーカーで鳴らすのも全然悪くない。というか、むしろこの方がよく伝わる。

途中で、少し長いMCというか朗読というか、語りが挟まれる。ステージの手前、客席の最前部に小さな水槽が置かれていて、後半はこの場所でパフォーマンスが行われた。最近水中録音に凝っているという話。水の中では音が遠くにまで届く。クジラは何百キロと離れた相手とコミュニケーションを取っているという話。相手は見えないが、声は聞こえる。「知らない声」の話。置かれた水槽にはマイクが仕込まれていて、会場に普段聞きなれない音が響く。

そして、会場に着いた時の、謎の炭の匂いの理由が唐突に判明する。水槽の中に真っ赤になった炭が放り込まれる。水が急激に膨張する音、木の細胞が弾ける音、膨れ上がって軋んで爆発する。本当に未知のサウンドに驚愕する。人類なんかが生まれるより遥か昔、地球上ではこんな音が鳴り響いていたのかもしれない。凄い。としか言えないこの自分の表現力の無さが悲しい。遥か遠くから響く音と、今を生きる自分の身体が繋がっていくような感覚。

今、この時に自分の目の前にある世界を捉えて、それを再度世界へと放流する。広大な河の水が1本の管を通って、そしてまた河の流れに戻っていく。そんな事を想像した。素晴らしい夜だった。