妹尾立樹 1981年生まれ。京都を拠点に活動するシンガーソングライターだ。2006年にベーシストの野島亮と共に「sistertail」というユニット名義のもと4曲入のCDをwonderground というレーベルよりリリースしている。その後は、自身の楽曲をリリースはしておらず、近年では彼がバックでドラムを演奏しているLLama、YeYe、ゆーきゃん、Turntable Films と言ったアーティスト達の音を聴く機会の方が多いのかもしれない。何せ年間100本を超えるライブをこなす、超売れっ子のミュージシャンだ。関西のインディミュージックシーンでは欠かす事の出来ない存在となっている。

 僕がその妹尾立樹と出会ったのは、sistertailが「enter」という、今のところ彼らの唯一となっているファーストCDを発表した直後ぐらいだったと思う。だから、もう6年とか7年程前の話だ。別の音楽家を通して、sistertailのライブをたまたま見たのが始まりだ。その時の演奏の事を、今となってはよく覚えていない。けれど、良い歌を歌うなと思ったはずだ。それは間違い無い。何せ、知り合ってから、何度も彼のライブを見てきたし、企画するイベントにも沢山出演してもらってきたけど、彼が良い歌を歌わなかった時は一度だってないのだ。
 それって、でも、ちょっと凄い事なんだと思う。彼の話を聞く限り、超多忙なミュージシャンとしての生活が、決してそれと見合うだけの経済的な潤いを彼の私生活に与えてはいないし、精神的にも文字通り倒れるまでギリギリの所で歌を歌っている。一体どれ程に音楽を愛せば、そんな生活を成り立たせられるのだろうか、と心配になる 。でも、そんな中でも、彼は歌を歌っている時が人生の全てなんだと言わんばかりに、ささやかな喜びとか小さからぬ苦しみとかを目一杯詰め込んで、そしてそんなのを全部ひっくるめて、生き生きと、どこか飄々としながら歌ってしまう。僕は、彼の様に音楽を愛し、そしてそれと同じ程に音楽からも愛されている(呪われているとも言うかもしれないけど)人間を、すぐには思いつけない。あ、これを書きながらふと思ったけど、CSN&Y の David Crosby とか何か近い物を感じるかもしれない。

 いつのライブだったか、彼が、「アメリカで911のテロがあって、その頃に書いた NEW DAY という曲、それから10年後に日本で地震があった。そして ten years という曲が生まれた。」「別に直接それらの事を歌っているわけじゃないんだけど。」と言っていたけど、彼がこの世界から幾許かの痛みを感じ取りつつ、この二つの曲が生まれた事に疑いはないだろう。彼の歌が大ヒットすればいいとは思っていないけど、彼と同じ時代の同じ国に生きて、彼は世界を見つめ己の身体に刻み込み幾つもの歌を歌ってきたのなら、それをやっぱりもう一度、外の世界へと還元して行く必要があるだろうと思う。僕は、少なくとも、いつまでも彼の歌を近くで聞いて、そして次のリスナーへと繋いでいかなければならないのではないか、と思っている。