Gängeviertel (ハンブルク)と千鳥文化 (北加賀屋)

Gängeviertelの事を知ったのは、確か、2015年の事だったと思います。ある北欧のアーティストから、ドイツ・ハンブルクに面白い場所があるよと、教えてもらったのが始まりでした。

2009年 再開発の為に取り壊し間近になっていた、築100年を超える12棟のアパート群を、200名を超えるアーティストが集まりスクワット(占拠)したのです。当時、ハンブルクでは、再開発の為に多くの歴史ある建物が壊されて、さらに、市街地では家賃が高騰しているという状況が問題になっていました。しかし、リーマンショックが起こり、不動産ディベロッパーによる再開発の話が頓挫したことから、事態が急転します。スクワッターとハンブルク市の行政とが手を取り合うこととなり、同地区の保存が決まったのです。現在では、市の支援を受けながら、アーティスト達がアトリエ、ギャラリー、ライブスペース、ゲストハウス、食堂などを運営していいます。周囲は高層ビルが建ち並ぶ大都会なのですが、一区画だけエアポケットに入り込んだような、別世界が広がっています。

そんな場所を知って、何度かメールでやり取りをしながら、共同でのプロジェクトを立ち上げることになりました。2017年の秋には初めてハンブルクを訪れ、今回の展覧会の参加アーティストで、Gängeviertel 内にある、Galerie Speckstraße のキュレーターでもある、イェシカさんと会って話をする事ができました。その時、例え住む場所が遠く離れていたり、話す言語が違っても、心が通じる人はいるし、反対に同じ日本に住み、同じ言語を話しているはずなのに、心が通じない人もいる、当たり前だけど、人と人とが繋がる事が出来るかどうかに、実質的な距離や言語は大した理由にはならない、とそう感じました。要するに、お互いにある種のシンパシーを抱き、展覧会を開催するという話が一気に前進したわけです。

それから1年後2018年の11月に、アーティストの西絢香と共に、Gängeviertelを再び訪れました。2015年から少しずつ対話を重ねながら、ようやく展覧会「Where I am When I am not here」をドイツ・ハンブルクの地で開催する事が出来ました。イェシカ・レイネン、カーステン・レイブ、西絢香の3名の作品が、Galerie Speckstraßeで10日間に渡って公開され、小さな点と点が少しずつ繋がっていくのを実感しました。展覧会の期間中、Gängeviertel内のゲストハウスに滞在し、食堂で食事をとったりもしたのですが、料金が全てフリー(タダという意味ではない)だということに、小さからぬ衝撃を受けました。価値を決める自由はサービスを提供する側ではなく、サービスを受ける側にあるというのがとても新鮮な体験で、対価を払うという行為が、何かしっかりと腑に落ちる感覚がありました。多様な感覚、価値観をお互いに尊重しながら、緩やかなコミュニティの中で共生していく姿は、示唆に富んだものでした。

ドイツ・ハンブルクでの展覧会を終えて、今度は日本で同展を開催するために場所を早急に決める必要がありました。大阪市とハンブルク市が姉妹都市だと知ったのは、少し後のことですが、どちらも港湾商業都市で川が多く、よく似た街だと思います。他にも、金沢、大津、宇野、尾道、と候補地がいくつかあったのですが、久しぶりに大阪で展覧会をやってみたいと思いました。

実は、今から10年近く前のことですが、月夜と少年が、西区の靱公園近くにギャラリーを持っていた頃、千鳥文化の小西さんも同じく靱公園近くでAD&A Galleryというギャラリーを運営されていました。ただ、その頃に何度かイベントで顔を合わせることはあったものの、このような形で10年後の今、アートを通して、また関わりを持つことができるとは想像していなかったように思います。

千鳥文化は築60年を超える文化住宅だった建物だそうです。北加賀屋はかつて造船業で栄えた街で、この建物の柱や梁、天井を見ると、当時の舟大工があり合わせの材料を使い、増改築を繰り返して、生活を築いていたことが伺えます。既存のものを破壊して、一から思い通りに、そして大規模に作ってしまうのではなく、その場所を使う人が、今ある物で、その時々の必要に合わせて手を入れて生活を築いていくというのは、遠くハンブルクのGängeviertelの様子と重なるところがありました。

 


Where I am When I am not here -ここからどこへ-

[展覧会]
2019年4月13日 – 2019年4月28日

[北加賀屋・ミニツアー] & [トーク・セッション]
2019年4月20日

詳細はこちら

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