清水恒輔 (mama!milk) from 京都

タイトル : I’m here… #05
場所 : 京都
インタビュー日 : 2020年5月22日
ゲスト : 清水恒輔 (mama!milk)


今回は、mama!milkなどで活躍する、音楽家の清水恒輔氏に話を聞いてみた。音楽に関わる仕事をするようになってから10数年だけど、mama!milkが今どんな活動をして、どのように音を鳴らしているのか。僕は心のどこかで、それが常に気になっていた。これまで何度も顔を合わせることはあったけど、挨拶程度で、あまり話をする機会がなかった。それが、このコロナの騒動のおかげで、少し踏み込んで話を聞くきっかけが出来た。

削ぎ落としたところでどれだけやれるのか。そう考えると、mama!milkに関して言えば、前から何も変わらないのかもしれない。

– 音楽活動(2020年5月22日録画時点)の状況について。

2月の終わりぐらいから影響が出始めて、7月までは全てのスケジュールが飛んでいる状態ですね。その先8月、9月となると企画自体が立てられない状態で、演奏活動は一旦ストップしています。去年から参加しているEGO-WRAPPIN’もツアーやフェスなど全てキャンセルになりました。無声映画のメトロポリス伴奏付上映会も、4月の半ばに神奈川で1週間ぐらいクリエイションしてから公演の予定だったのですが、それもなくなってしまいました(再演が決定とのこと)。ただ、mama!milkではアルバムを作り出しています。録音自体は去年から始めていて、3月にギリギリ原美術館を借りる事が出来たので、マリンバの方とか来れる人に来てもらって、レコーディングセッションをしました。それと、これまでに録ったものを元に、オーバーダブなどはテレワークで続けているって感じですね。

– それだけ広範囲でスケジュールのキャンセルが出ると、少なからぬ影響があると思うが、どうなのだろうか。

スケジュールはスカスカなんだけど、やることは山盛りです。一昨年ぐらいから、隙間を見つけてソロアルバムを作っていたけど、なかなかじっくりと取り組む余裕がありませんでした。それを一気に仕上げにかかっていたりだとか。やれていなかった事を今のうちにやろうと思って、3月終わりぐらいから始めています。僕と同じように、思わぬ時間ができたミュージシャンも多いので、京都の人であれば会いに行って録音したり、テレワークでやったりしています。実際にお金が動かない事以外は、すごく忙しいです。

それと、こんな時だからと配信を始めました。配信の事も勉強して出来るようになりたいと言っていた、知り合いの映像クリエイターと一緒にチームを組んでやっています。皆でトライアル&エラーを繰り返しながら、違う表現も出来るのではないかとやってますね。先日、法然院で、3カメを入れてライブ配信を行いました。法然院は、10年ぐらい「ときのあとさき」というイベントをやらせてもらって、住職さんとも懇意にしていて、話をすると「どうぞ使って下さい。」という事でした。アーカイブに残して、普段よりも遠くの人に届けられるので、配信にも可能性はあるのかなと。今すぐには何もないけど、やり出したら、外国の人とか、普段会えない遠くの人から反応があったり、何かこの先にあるかもしれないと思っています。

– 僕自身もきっと、今回のような事がなければ、こんなふうに話を聞く機会もなかっただろう。ある日、Facebookを見ていたら、タイムラインに恒輔さんが「僕としては、全く自粛してません。京都でじっくり腰を据える時間が、思わぬタイミングで降ってきた感じです。音源制作のアクセルが踏めたりしてます。」と書いているのが目に留まった。

気は使ってますけどね。自粛はしてないですね。場が無くなったから出来ないという以外では、やれる事はあるので、この隙にやれる事を探して、人も巻き込んで、動いていくっていうのは逆に面白いと思っています。皆こうじゃなきゃいけないとか、このぐらいの予算がなきゃ動けないとかそういうのが、この状況で一旦全部無くなっている。この先何が出来るだろうかと試す事が出来る。動かなければお金が入ってくる訳でもないですし、でも動いてみたら、この先に繋がる、経験と技術が身に付くかもしれない。それを少しでも発信していけたらなと思っています。配信は6月にもいくつかプランがあって、その中で、ちょっとずつ色々な人を巻き込んでやっていこうかなと思っています。

– これまでのライブだと、お客さんと演者の双方向の流れがあって、それは演奏にも少なからず影響を与えていたと思うが、配信をやってみてそのあたりはどのように感じたのだろうか。

mama!milkに関して言えば、関係なくもなないですけど、演奏が始まったら、演奏するだけなので、そんなに変わらないかもしれない。ただ、配信をする上で、ちゃんと場を作り込んで、それなりに綺麗な画にするっていうことと、「ライブ配信しました、ハイ終わり。」というのではなくて、きっちりアーカイブと音源を残すという事を決めています。ライブだと、実験的な事をして失敗しても、その次へと流されていってしまう。アーカイブに残すという部分では、毎回ライブ盤を録っているぐらいのつもりなので、緊張感はあります。演奏の機会が減ると精度を上げていくのがなかなか大変なんですけど。

– これから先の、音楽や演奏活動を取り巻く状況にはどんな変化が訪れるだろうか。

楽しみにするしかないですよね。具体的に、どうなったら良いというイメージがある訳ではないですけど、音楽を聴くとか映画を見るという行為が無くなりはしない。それは、でも、今までのやり方のままでは出来ないのかもしれないですね。今までの、過剰だったものが落ち着いていくのかもしれない。表現がマスに向かう過程は来るところまできて、一旦壊れた感じはありますね。ホールコンサートであれば、入って聴いて速やかに帰って下さいという事が出来ますが、フェスはそうは行きません。大きなフェスとかは沢山の人が集まるというのと、飲食があるとか、復活するのにハードルが高いのかなと思います。

色々な付加価値を付けるのが難しくなっていくかもしれない。削ぎ落としたところでどれだけやれるのか。そう考えると、mama!milkに関して言えば、前から何も変わらないのかもしれないですね。もともと、すごく沢山人が集まるという訳でもないし、お客さんも皆で盛り上がるというよりは、その場に応じた適度な人数で、ライブの間は一人になって聴くみたいな。映画館に一人で行くような感じに近いですね。隣と席が2m空いていたら逆に嬉しい人もいるかもしれない。僕たち対それぞれの人という感じなので、配信であっても、ライブであっても、やってる事や距離感はあまり変わらないかもしれないですね。

震災の時も世の中がひっくり返るような状況になって、何か変わるんじゃないかと思ったけど、結局あまり何も変わりませんでした。でも、今回は、あの時より、地域に関係なく当事者意識を持ってる人が多いと思います。なかなか上手くは行かないけど、少しだけ声は届くようになったように感じます。皆が自分のこととして、意識も知識も高めていかないと、これから対応出来ないのではないでしょうか。

作った物をどうやって発表して動かしていくのか、その道筋はまだ全然見えてないですけど、変わって来るだろうなとは感じますね。どうなるかは分からないけど、思いついた事はやってみれば良いんじゃないかなと。ま、幸いにも、僕たちは失敗しても誰にも怒られないので、とりあえず、面白そうな事はやってみようと思います。


この記事を編集している段階で、各都道府県に発令されていた緊急事態宣言は解除となった。各地域で少しずつライブが再開されるというようなアナウンスが流れてくるようにもなった。しかし、ライブイベントに、これまでのようにオーディエンスが戻ってくるのか、僕には、まだ確証が持てないでいる。そもそも、音楽家にとってライブパフォーマンスをするというのは、どういう事なのだろうか。コロナを一度経験してしまった社会の中で、音楽家やアーティスト達はどのようにバランスを取り、表現をアウトプットしていくのだろうか。そのフロントランナーとして、試行錯誤を楽しむmama!milkの姿を見ておきたい。


PROFILE : 清水恒輔

実験音楽、インプロビゼーション、ダンス、演劇など多種多様な現場を自由に行き交いながら、数々のバンドのボトムを支える。近年はコントラバス奏者としてmama!milkをはじめ様々なプロジェクトに、 2019年より、ベーシストとしてEGO-WRAPPIN’に参加。

また多楽器奏者・曽我大穂や、ピアニスト・林正樹をはじめ、親交の深い音楽家を迎えたソロアルバムを、密やかに制作中。2020年5月には、永江孝志とのユニット、「OK MUSICS」の初音源EPをBandcamp限定で先行リリース。

 

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