企業分析

ペガサスミシン Q&A

前回の記事でペガサスミシンの分析記事を上げましたが、幾つか気になる事があったので、IRに直接問い合わせてみました。四半期決算ごとに持ち株や、気になっている会社に関しては、分析後に疑問点があればIRにメールで質問をしています。決算短信からだけでは分からない現場の声を聞くことは、投資判断の為の重要な材料になると思っています。

決算の数字を追って、前四半期から変化の大きい部分は要チェックです。急激な原価上昇や販管費の上昇、それに伴う営業利益率の変動。売掛金が急激に膨らんでいないか、現金や負債の変動はどの程度か。またセクターごとの内容を開示している企業であれば、その内訳の比率など。それから、過去の平均的な進捗率と比べて、期初予想通りに進んでいるか。もし乖離しているようであればその要因は?

何か大きな変化があるようなら、その原因に想像を巡らします。その原因は今後の業績に大きな影響があるのかどうか?そういった事をだいたい自分で仮定してから、IRに質問するようにしています。

今回ペガサスミシンに質問したのは以下の3点です。

– ダイカストの製造事業に関して
– 米中間の貿易摩擦の影響に関して
– 中期経営計画計画に関して

回答には、米中間の貿易摩擦の影響など、非常に参考になる事が多く書かれていました。これでよく分かったのは、とにかく製造業は現地生産、現地販売が必須だという事。ペガサスミシンで言えば、工業用ミシンについては先のリーマンショック時あたりから徐々に生産地の最適化を進めていて、今回の米中間の貿易摩擦の影響は比較的軽度で済んでいる。ダイカストに関しては、生産地を分散させるタイミングが丁度トランプ政権の発足と重なってしまった。

結局のところ、こういった、マクロ経済を巡る動揺というのは、中身がはっきりと見えないうちが、様々な憶測が疑心暗鬼を生み、実際の業績にも影響するのだなと感じました。実際に中身がはっきりとしてくれば、例えそれが、米中貿易戦争のような芳しくないものであったとしても、そこに対応策を講じる事が出来ます。

質問と回答を合わせて転載しておきますので、どうぞ参考にして見てください。

質問1 ダイカストの製造事業に関して


まず、ダイカストの製造事業に関してですが、四半期ごとの利益率の推移を見ていますと、2015年3月期の2Qまでは、20%程度あった営業利益率が徐々に下がっていて、ついにこの四半期では赤字となってしまっています。在庫調整の影響とありますが、ダイカスト部門に関しても継続的に設備投資をされているようですし、今後の見通しとして、営業利益率を20%とまでは言わずとも、10%台の半ばまでは引き上げられる見通しはあるでしょうか?また、2018年3月期決算説明会資料にありましたが、2018年末にはメキシコ子会社による操業を開始するとあった生産活動は順調に進んでいますでしょうか?

回答1) 今期の弊社ダイカスト部品事業の営業利益率低下の主な要因としましては、メキシコ子会社設立による先行投資でございます。経緯をご説明いたしますと、メキシコ子会社設立当初(2016年)は子会社設立後1年後をめどに生産体制を整備し、2年目以降に操業する計画としていました。しかしながら2016年の米大統領選挙で新たに発足したトランプ政権の「アメリカ・ファースト」の施策により、世界の通商政策(貿易協定)の先行きが不透明となりました。このため、弊社のメキシコ子会社での生産計画も見送りを決定しました。メキシコ子会社では、中国およびベトナム子会社から米国あるいはメキシコへ出荷していたものを生産移管させる計画でしたが、この生産計画の見送りにより、メキシコ子会社は物流機能(中国およびベトナム子会社にて製造したダイカスト品を米国あるいはメキシコへ出荷)のみで操業する状況が続いたため、利益を圧迫する要因となりました。(メキシコ子会社からの出荷価格が、中国およびベトナム子会社との取引価格とすることが前提条件であったため)そのほか、2017年後半から大手取引先の在庫調整が始まり、2019年3月期の第1四半期で収束する予想でしたが、第3四半期まで長引いたことで操業度の低下により原価率が上昇し、営業利益率の圧迫要因となりました。

足元では取引先の在庫調整は徐々に回復しており、今期末には収束する予想でございます。来期に向けましては、在庫調整の収束と、中国での新規取引先との取引拡大や、中国の環境規制強化に伴う同地の同業他社廃業による当社への切り替えに加え、メキシコ子会社ではこの1月より鋳造が始まり、夏以降の本格生産および出荷を皮切りに、量産に取り組んでまいります。メキシコ子会社にて量産がスタートすることで、操業度の向上によって利益率は改善するものと考えております。メキシコには世界の自動車完成メーカーが進出していますが、裾野の部品産業はまだ発展途上にあります。完成車メーカーが部品の現地調達化を進める中で、USMCA(新NAFTA)は弊社にとっては追い風になるものと期待しております。

質問2 米中間の貿易摩擦の影響に関して


四半期ごとの推移を見ていますと、工業用ミシンについては、米中間の貿易摩擦の影響はあまり感じられず順調に期初予想通りに進んでいるようなのですが、実際現場ではどのような雰囲気なのでしょうか?やはり、報道でもあるように製造業の貿易摩擦の影響に関しては警戒感は強いのでしょうか?

回答2) 工業用ミシンにつきましては、2018年春頃より米中貿易問題が日を追うごとにエスカレートする中、前期下期より好調に推移していた弊社中国市場でも設備投資に対し、慎重な姿勢が見られるようになりました。もともと工業用ミシン事業では、2~3年前から中国のコストアップに伴う生産地の分散化ということで、弊社ではチャイナプラスアザーズとご説明しておりますが、中国から中国以外のアジア(その他のアジア)や米州の中米を中心に、生産地移転に伴う新規の需要が起こり、弊社の業績も堅調に推移いたしました。中国は世界の衣料品の世界最大の生産地ですが、その比率は年々低下しております。しかしながら、中国では衣料生産に必要なすべてのもの、例えば、生地、糸、ボタンやファスナー等の副資材、またミシンもですが、これらが一国で調達できることや、縫製に関して歴史もあることが、最大の優位性です。このような中、前期下期から一部で中国回帰が見られ、中国での投資が伸びていたところに、米中貿易摩擦問題が起こり、前述の通り、期を追うごとにつれ、設備投資に慎重な姿勢が見られるようになり、第3四半期には急速に設備投資意欲の後退が見られました。また、中国では米中貿易摩擦による国内景気の減速を食い止めるため、政府が積極的な減税対策を打ち出しており、海外からの輸入品に対しても、関税率を引き下げる施策が実施されました。海外から輸入される衣料品には15.7%の関税がかかっておりましたが、2018年7月1日より7.1%に引き下げられ、中国国内の内需衣料を縫製する企業でも、先行きの不透明感から、設備投資を控える動きが見られました。

一方で、世界の衣料需要は、人口の増加や新興国での中間層の増加に伴う生活水準の向上により、服装のカジュアル化や1人当たりの衣料保有枚数が増加することや、例えばインドなどのように民族衣装からの洋装化などを背景に、安定的に拡大しております。この様な背景から、世界の衣料需要の総量はどこかから調達しなければならず、中国からの調達が難しくなると、中国以外からの調達が増えることとなります。その受け皿の条件としては、安定した供給が可能、まとまった数量が確保できる、品質が安定しておりかつ安価である、納期が守れる、為替が安定している、関税が低い、など、複数の条件があり、これらを満たすような候補地へ生産が移動いたします。当期においては、中国からの移動先としてベトナムや中米を中心に活発な投資が続いておりますが、第3四半期で中国での投資の急減に対し、その受け皿となる候補地での設備投資が追い付かず、現状ではタイムラグが発生していると考えております。これらはいずれ解消するものと考えておりますが、現在進んでおります米中貿易協定の内容が3月に発表され、その状況が見えるまでは、現状の状況が続くものと考えており、弊社としましては、来期下期以降に徐々に回復してくることを期待しております。

質問3 中期経営計画計画に関して

最後ですが、今期の見通しを引き下げていますが、中期経営計画計画に関して引き下げる予定はありますでしょうか?進捗で見ると大分乖離が大きくなっていて、達成は困難に見えますが、見通しを維持するというようでしたら、その根拠を知りたいと思います。

回答3) 中期経営計画で発表いたしました業績目標につきましては、達成に向けて取り組んでまいりますが、当初発表いたしました事業環境とは異なることもあり、チャレンジングな目標であると認識しております。しかしながら、次期中期経営計画のベースとなる年度でもあるため、その足掛かりとなるようしっかりと地固めに取り組んでまいる所存です。

その施策としましては、工業用ミシンでの成長戦略として、当期より取り組み始めました価格的戦略機種によるシェア拡大施策として、新たに新機種を発売いたします。またニーズの高い既存装置や既存機種を大幅に改良した製品2~3タイプを発売いたします。これらは弊社がこれまで進めてきました3つの差別化の一つである、製品の差別化を具体化した製品であり、今後も自動縫製システムの研究を強化するなど、引き続きユーザーファーストを視点とした製品開発を推進してまいります。加えまして、非アパレルミシンの拡販も実現させることで、事業領域の発展拡大を図ってまいります。

他方、収益構造の強化として、さらにコストダウンを推進してまいります。中期的な視点で、これまで進めてきました材料費以外でのコストダウンとして、生産過程の自動化の研究を強化いたします。また、営業力を強化し、たえず移動する生産地で迅速なユーザーフォローに努めるべく、主要地域での技術者の常駐体制を構築するなど、ペガサスファンづくりにも取り組んでまいります。

ダイカスト部品では引き続き新規取引先開拓による販路拡大に努めてまいります。

*ページ上部の写真 美術作家、Han Yun Liang の版画作品と雛人形

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