森ゆに & 田辺玄 from 甲府

タイトル : I’m here… #04
場所 : 甲府 (山梨)
撮影日 : 30th/Apr./2020
ゲスト : 森ゆに&田辺玄
曲目 : 星のうた/森ゆに


甲府の街を訪れると、四方を山に囲まれているせいか、街全体が少し宙に浮いたような、いつも霞がかったようで、色彩が薄く、浮世離れした感覚になる。そんな甲府の街のさらに高台の上に、二人の音楽家、田辺玄と森ゆにのベースとなるStudio Camel Houseがある。きっと二人はこの今の騒動の中でも、変わらぬ生活の上で音楽に触れようとしているのだろう。そう思って、彼らの話を聞いてみたくなった。

これが落ち着いた先に一体何があるんだろうなっていうのには、すごい興味がある。面白い世界が待っているような気はしているんだけどね。

– 彼らが暮らす山梨県甲府市の現在(2020年4月30日録画時点)の状況について。

田辺玄: ライブは無いけど、山梨に居て、前からいつも篭ってるから、あんまり変わらない。周囲のお店は皆自粛してテイクアウトに切り替えているという状況かな。

森ゆに: 4月のアタマぐらいからそんな感じになり始めた。スーパーとかは空いてるけど、大きなショッピングモールとかは閉まっている。自家用車で行こうと思えば行けるけど、県外には出てない。

 

– ライブや音楽活動の現状について。

田辺玄: 6月ぐらいまでは全部中止になってる。

森ゆに: ただ、冬までは予定が入っているけど、夏以降のものはどうするかという話し合いもしていないという状況。状況が週毎でも変わるから、判断がしにくい。

田辺玄: 時間が出来たから自分の作品を作り始めたり、前から入っていた制作の仕事を少しずつしたりとかって感じかな。ただ、周りのミュージシャンも皆こんな感じの状況だから、制作をし始めている人も同じように多くて、その仕事がまた少しずつ来てる。

森ゆに: コロナの色々の前から、一応次の作品のイメージもあって、それに向けて準備しつつだけど、、、ゆるゆるとやっている。何かやらなきゃというような、変なモチベーションで作っても、良い結果が出なさそうだから、いつもと同じ流れで作りたい。制作をしなければというマインドにはなっていない。

田辺玄: 昨日もそんな話をしていた。すごく大変で悲惨な状況で、自分たちもその波に影響を受けて、大変かもっていう気持ちにもなるけど、よくよく冷静に考えると、あんまり生活は変わってないかもしれない。ライブが無いとか、人に会えないというのは凄く寂しいんだけど、根本的な所はあまり変わってないと思うと、少し安心できる。

 

– とは言え、この今の状況が落ち着いてきたとしても、これまでと同じようには行かないのではないか。何かこれからやってみたい事とか、考えているような事はないだろうか?

田辺玄: これがあったからというよりも、前々から考えていた事なんだけど。そもそも山梨という、東京や大きな街から離れた場所で音楽をやる生活になってから、ずっと地続きではある。大きく変わる事はないかもしれないけれど、離れながら出来ることを、カタチにして発信していく機会が増えるかなと思っている。コロナの事があって、今までのやり方がより確かになっていくんじゃないかな。ここ数年はライブが多かったけど、もともとこういう生活だったよなと思う。また制作に向かっていって、自分の小さなスペースから何かを発信するという感じになるのかな。

森ゆに: もちろん、ライブもいっぱいやってきて、良い出会いもあった。ただ自分の音楽は、CDを買って自分のおうちで聴くという層が凄く多い印象がある。具体的にこの先どういうふうにしていくと、細かく決めてはいないんだけど、おうちで制作して、おうちでじっくり聴いてもらえるものを作り続けるっていうのは確か。

田辺玄: 前から、何となく準備していた所はある。このスタジオも、長い間色々な人たちの仕事を請け負う比重が大きかったけど、自分たちのものを作って発信する場にしていきたいと、去年ぐらいから思っていた。それが強制的に、もっと考えて行かなくちゃならなくなった。

今音楽の聴かれた方って、凄くいろんな形がある。アウトプットの仕方は凄く沢山あって、そこの選択肢には困らないと思っている。

森ゆに: インターネットにアクセスすれば、日本だけでなく、世界中から見れるっていう良さはあるけど、ライブのその場所、その時間だけのスペシャルなものもある。やみくもにオンラインで発信するのではなくて、それがまた出来るという可能性もちゃんと残しておきたい。

 

– 今、何か取り立てて、集中的に取り組んでいる事はあったりするだろうか?

田辺玄: 去年の年末ぐらいからやっているんだけど、今ずっと、フルートの練習をしている。今は、ルーティンみたいに決まってる方が気持ちが落ち着くなというのもあるから、一日の流れの中にフルートの練習が組み込まれてる。実は、10年ぐらい前から何となく思っていたけど一歩踏み出せなかった。原始的に息を吹いて演奏する楽器というのに興味があった。久しぶりに楽器に向かっていて、ギターを弾き始めた時ってこんな感じだったよなとか思っている。熱量もあるし、同時に時間もあるし、楽しい。

森ゆに: 私はオンライン英会話に入会した。この篭っている時は絶好の機会だと思って、英語を勉強してる。ちょっと前もやってたんだけど、ツアーとかでバタバタしていると、モチベーションが保てないし時間もうまく取れなかった。だから今しかないと思って。フルートでも、英語でも何でも、毎日決まった時間にやると、身体がだんだん慣れてくる。だから、結構この時間をポジティブに過ごしていると思う。

田辺玄: そういうのをやっていると、一日があっという間に終わっちゃう。先週40歳になったんだけど、今年のアタマぐらいから、40歳ってそろそろ折り返しだなという気持ちが強い。意外と残り時間少ないかもと思い始めて、ぼんやりとやりたいと思っていた事は、スピードを上げてやった方が良いかもと思っている。

これが落ち着いた先に一体何があるんだろうなっていうのには、すごい興味がある。面白い世界が待っているような気はしているんだけどね。


この記事を編集をしながら、彼らの過去の作品を沢山聴いた。その中のいくつかは、ジャケットのデザインやライブを企画したりで深く関わったものもある。これまで何度も聴いてきたはずの彼らの音楽が、今のこの状況で、とても新鮮に響いている事に静かに感動した。また、この先あの場所から、彼らが届けてくれる音楽を楽しみに待とうと思う。


PROFILE

田辺玄:山梨県出身。Studio Camel House主宰。ギタリストやレコーディングエンジニアとしての活動や、映像や空間のサウンドデザイン等、音を通じて人や場と関わり制作を続けている。WATER WATER CAMEL (活動休止中)、森ゆに・青木隼人とのトリオ「みどり」、haruka nakamuraとのユニット「orbe」やバンド編成「CASA」のメンバーとしても活動中。

http://studiocamelhouse.com

森ゆに:シンガーソングライター、ピアニスト。バンド活動を経て2009年よりソロ活動開始。2019年11月、オリジナル4作目となるアルバム「山の朝霧」をリリース。また、ギタリスト田辺玄と青木隼人とのユニット「みどり」にてボーカルをつとめる。

http://moriyuni.net

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