電業社機械製作所

今日は、投資判断をする上での実務的な部分を少し書いてみたい。投資というと、将来有望なベンチャーに夢を託すというようなイメージもあるかもしれないけれど、僕はあまりそういう事に興味はない。不確実な未来に夢を託すなんてのは今の自分の人生で十分だと思っている。投資においては、企業の業績や実績からの定量的な判断を重視している。

以下、実際に株式投資をやっている人以外には、さっぱり何の事か分からないと思うので、適当に流してもらえればと。

まず、僕は証券会社などのスクリーニング機能を使って大体の投資先候補となりそうな企業を絞ってみる。かなり保守的で固い企業を対象としているので数値は時々で調整してみてほしい。

・PER15倍以下
・PBR1倍以下
・自己資本比率65%以上
・配当利回り2%以上

とか、大体はこの辺りに設定しつつ、もうちょっと成長性を期待する企業も候補に入れたいとかであれば、PERを緩めの設定で20倍以下とか、その代わりPBRは厳しめに0.8倍以下にしたり。

この中から事業内容など見つつ、気になる企業を絞って、細かく財務状態や業績などの分析を行う。目指すのは、損失をなるべく少なくし、投資リターンのある企業を見つけ出す事だ。まずは、財務分析から行ってみる。直近の決算短信の中から貸借対照表を確認する。企業がどれだけの資産を持ち、どれだけの負債を持っているかが分かる。それで、こんな企業があれば、マーケットは本質的な企業価値を見失っているのでは、と疑って見て良い。

(流動資産ー負債合計)÷(期中平均株数)>現在株価

これがどういう事かというと、会社が持っているすぐに使用できる資産(現金預金など)から、負債の全てを差し引いた余剰資産よりも、時価総額が安いというような状態にあるのだ。想像して見てほしい。一つのバッグがあって、その中には1億円の現金と土地の権利証が入っている。そのバッグを6000万円で売ってくれるという。この様な本質的価値から乖離した正味流動資産割れをしている会社の株を探していく。今回は電業社機械製作所という企業を参考にしながら分析を行ってみる。

157億円の流動資産から51億円の負債合計を引いた、この企業の正味流動資産は106億円となる。2017年度第2四半期の決算短信より440万株が市場に出ている事が分かる。1株あたりの正味流動資産は2409円となる計算で、現在株価が1900円ぐらいなので、本質的価値から随分乖離しているということが分かる。

前回のブログにも書いたが、流動資産の中でも現金及び預金というのが、最も信用度が高い資産なので、さらに安心な資産を探すのなら、キャッシュの多い企業を探せば良いだろう。電業社機械製作所の場合、売掛金の項目が多い。これはざっくりと言えば、商品を売って売上計上は済ましているが、まだ顧客からの支払いはされていなく、振り込みを待っている様な状態の資産だ。ここの値が売上比で年々増えていっている場合は少し注意した方が良いが、この場合は問題ないだろう。投資の神様ウォーレン・バフェットの師匠とも言える、ベンジャミン・グレアム氏は「賢明なる投資家」の中で、防衛的な投資家の場合、流動資産が流動負債の最低2倍以上であること。また長期負債が運転資本を超えないこと。とも述べている。

財務面の分析でもう一つチェクしておきたい項目がある。一株あたり純資産(BPS)の推移だ。純資産は言わば企業の稼ぎの積み重ねだと言える。余剰利益を出せば、それを元手に新しい工場を建てたり次の事業の為に投資を増やす事ができる。それは資産となって積み上げられていく。ここで、僕は10年間の推移を見ている。10年間の推移を見れば、好況不況の両方が大体含まれる事になるので、その時代の流れに沿った企業の資産状況を把握する事ができる。もちろん、各企業の有価証券報告書や決算短信を見れば分かるのだけど、少し手間がかかるので、僕は「みんかぶ」というサイトを活用している。各企業の企業情報を見れば10年の推移が一目で分かる。

折れ線グラフの各ポイントで数値が表示されるので、それを参考に見ていくことにする。注意したいのは、2008年に株式分割が行われ発行済株式総数が3倍になっている。この場合は1株あたりの純資産は1/3に調整しなければならない。2007年のBPSが2930.3円でリーマンショック時に若干低下するものの、概ね順調に資産を増やしていて、2016年で3698.08円となっている。年率換算で2.35%の伸び率となっている。この伸び率が順調に続くと考えると、10年後のBPSは4666.97円と想定する事ができる。PBR1倍辺りまで買われるタイミングがあれば、今後10年間で1年平均9.4%程度の株価の成長が期待できる事になる。

財務、資産面から分析して、マーケットはこの企業の価値を随分過小評価しているのではないか。上でも少し述べたが、財務面の安定している企業は、金融危機時には無類の強さを発揮する。リーマンショックで、世界中が揺れた時にも、この企業は資産をほとんど減らす事なく危機を乗り越えている。これは、大きく評価して良いポイントだと言える。投資した会社の資産が、世界の金融危機時にも大きく毀損する事がないという事は、銀行に預金をするよりも安全だと言えるのではないか。

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